明確な意味では建築設備ではなく、家電製品というカテゴリーの中で、建物とは切り離して考えられてきたわけです。

当然、家電製品は不特定多数の方が使われるのですから、特定の建物や住まい方に合わせた機能ではなく、多様な要求に対して大多数の家庭が必要とする最大公約数的な機能を中心に実現しようとすることになります。 これらのことから、エアコンの風量は、後に述べる空気式セントラル空調システムの一部屋のそれに比べて3〜5倍ととても大きくつくられています。
良く断熱された住宅のもう一つの長所に室内壁の表面温度が室内空気温度に近く維持されるということがあります。 このような環境において、例えば暖房では、通常の暖房設定温度よりもかなり低い温度で、人間にとって十分な暖かさが感じられます。
失われる熱量が大きいと寒く感じ、少なければ暑く感じるのです。 人体から逃げる熱量の多くの部分は、周囲の空気温度と放射温度の双方で決定されます。
周囲の放射温度とは簡単には室内壁の温度と考えれば良いのですが、それが人体から逃げる熱量に関係するのは、人体と壁との間で熱放射のかたちで熱が移動するからです。 昔から使われている「底冷えがする」といった温熱感覚の表現は放射温度が低い環境を表すものだと思います。
ですから、寒い地方の暖房のやり方は、空気を暖めるのではなく壁を暖めるのだと良く言われます。 例えば、北欧の住宅では良く断熱された住宅に小さな放熱器をずっと運転するかたちが普通で、このような場合、壁や家具が暖まっているために、室温は180Cでも十分なのです。
逆に言えば、空気温度だけ高くても周りの壁の温度が低くては、快適な暖房環境は得られず、空気が乾燥し過ぎたりするなど良くないことが多くなるのです。 さて、室内の温度に続いて、家の中全体の温度について考えたいと思います。

本書の最初で述べたように、居室以外のホールや洗面所なども多少の空調は必要です。 この場合、ホールやトイレには直接の空調吹出し口があるわけではないのですが、居室からの循環空気によってある程度の暖房ができていることがわかります。
前にも説明したように、多少なりとも空調されているホールやトイレは本当に快適なものです。 そしてそれは住宅の熱的性能を向上させることで可能になるのです。
だからと言って、使わない部屋まで冷暖房するのはもったいないというのは全くそのとおりです。 使わない部屋は照明だって消すのになんで冷暖房までするのかという疑問は当然のことです。
寒冷地ならともかく温暖地の住宅で全館連続冷暖房が必要で、あるというのはややゆき過ぎた考え方です。 筆者らが提案したい全館空調システムでは、家族のライフスタイルや熱環境への細かな要求に適応して、個別の空間制御を可能にしたシステムです。
それは各部屋の温度を任意の温度に保つことができるということです。 住宅には、老人、乳幼児、病気の人など様々な人達が暮らします。
その方達にとって適切な温度がすべて一様であるはずがないのです。 断熱気密住宅の空気中の湿度今度はこのような住宅では湿度がどうなるのかを説明したいと思います。
その前に、湿度には絶対湿度と相対湿度があることを説明します。 私達がふだん湿度と呼んでドいるのは相対湿度と言われる指標です。
この指標は、ある温度の空気が含み得る最大の水蒸気の量に対して実際の水蒸気の量を示すものです。 空気は温度が高いほどたくさんの水蒸気を含むことができますから、同じ水蒸気量でも空気の温度が高いほど相対湿度は低くなります。

一方、絶対湿度とは、空気中の水蒸気の量を示したもので、温度によって変化しません。 住宅の湿度を考えるときに難しいのは、二つの側面があるからです。
一つは、人間に適する湿度の維持で、もう一つは建物に適する湿度の視点です。 そして都合の悪いことに両者の方向は相反することが多いのです。
例えば、冬に室内空気が乾燥することを考えてみましょう。 冬の乾燥とは、暖房をして空気の温度を上げるために、相対湿度が下がるということです。
家の中では常に人間自身や炊事などの生活行為に伴う水蒸気の発生があり、さらに木造建築であれば建物自体に自然な吸放湿作用がありますが、それは室内の相対湿度低下を防ぐには十分な力を持っていません。 この冬の乾燥は人間にとっては不快なことです。
これを解決するために、室内の相対湿度を加湿装置などの機械的手段によって上げることは平易なことです。 しかし、このことは建物にとって致命的な問題となる壁の表面や内部に起こる結露という危険性をはらんでいます。
もちろんそれを防止するために十分な壁の防湿や後に述べる適切な換気計画を立てることは当然ですが、それにしても、外気温度が零度のときに室温を23度に相対湿度を50%に維持することができる、というようなことを私達は残念ながら断言することができないのです。 このような住宅では通常の暖房設定温度よりもかなり低い温度で、人間にとって十分に暖かい感じが得られますから、あまり温度を上げないようにすることが湿度についても効果的です。
例えば、空気温度230Cで30%の相対湿度が、もし180Cであれば40%となるからです。 次に、冷房時の湿度を考えてみましょう。
機械が空気を冷やすとき、空気中の水分は、コップの表面に水滴がつくように、機械によって除去されます。 ですから、冷房をするということは部屋の湿度も下げる効果があることになります。
しかし、冷房をするとき、機械は部屋の温度を一定にするように働きますが、湿度を一定にするようには機能しません。 そのため部屋の湿度は下がることになりますがその値は一定にはなりません。
さらに、梅雨時の湿度についてはどうでしょうか。 梅雨時の温度は暑くも寒くもありませんから、湿度だけ下げたいという要求になります。

それをするための機械は、まず空気を冷却して水分を除去したうえで再度空気を加熱して室内に送り出すということを行います。 このような機械を除湿機と呼び、冷暖房機にも除湿機能を持ったものがあります。
住宅の熱的性能を上げ、省エネルギー的に温度はある水準を保ち、さらに一定にコントロールできるようになりました。 断熱・気密住宅と言えども、湿度を一定に維持するということはなかなか難しいことです。
複雑な機械仕掛を持ち込めば多分可能でしょう。 しかしそれは私達の住宅に対するコンセプトから離れていくような気がしてなりません。
私達は、過剰にゆきすぎた設備を導入して、実験室や手術室のような恒温恒湿室や無塵室をつくろうとしているのでしょうか。 そんなことは、前述の高断熱・高気密の無意味な数値指標の追求のように、やりすぎと言わざるを得ません。
ただし、受動的な方法として、熱回収型の換気扇を使う方法があります。 熱回収型の換気扇は、夏や梅雨時の外気の絶対湿度が高い場合には、家の中への水蒸気流入を抑制し、冬の外気の絶対湿度が低い場合には、家の中の水蒸気が外へ流出することを防ぎます。

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